「タイの祝日は年間20日近くもあるのに、本当にすべて休ませなければいけないのか?」――タイに進出する日系企業の経営者・人事担当者から最も多くいただくご質問の一つです。結論から申し上げると、タイの労働保護法(Labour Protection Act)が定める最低基準は「年間13日」であり、政府発表の祝日すべてを休日とする義務はありません。
本記事では、2026年のタイ祝日の最新リスト、企業が祝日設定を行う際の法的ルール、閣議決定された祝日、そして休日出勤時の割増賃金や就業規則作成の実務まで、タイで会社を運営する立場から押さえておくべきポイントを整理します。
1. 2026年のタイ祝日は「19日」|閣議の最新動向
2025年12月4日、タイ政府は2026年の祝日カレンダーを正式に発表しました。政府機関ベースで合計19日(うち1日は閣議承認の特別休暇)が祝日として指定されています。
2026年タイ祝日カレンダー(政府発表)
| 日付 | 曜日 | 祝日名 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1月1日 | 木 | 元日(New Year’s Day) | ― |
| 1月2日 | 金 | 特別休暇(Cabinet-approved) | 5連休にするための閣議承認休日 |
| 3月3日 | 火 | 万仏節(マーカブーチャ) | 禁酒日 |
| 4月6日 | 月 | チャクリー記念日 | ― |
| 4月13日〜15日 | 月〜水 | ソンクラーン(タイ正月) | 3日連続 |
| 5月1日 | 金 | レイバーデイ(労働者の日) | 民間企業の祝日 |
| 5月4日 | 月 | 戴冠記念日 | ― |
| 6月1日 | 月 | 仏誕節(ヴィサカブーチャ)の振替 | 5月31日が日曜のため/禁酒日 |
| 6月3日 | 水 | スティダー王妃誕生日 | ― |
| 7月28日 | 火 | ワチラロンコン国王誕生日 | ― |
| 7月29日 | 水 | 三宝節(アサラハブーチャ) | 禁酒日 |
| 7月30日 | 木 | 入安居(カオパンサー) | 官公庁のみ/禁酒日 |
| 8月12日 | 水 | シリキット王太后誕生日/母の日 | ― |
| 10月13日 | 火 | ラマ9世記念日 | ― |
| 10月23日 | 金 | チュラロンコン大王記念日 | ― |
| 12月7日 | 月 | ラマ9世誕生日/父の日の振替 | 12月5日が土曜のため |
| 12月10日 | 木 | 憲法記念日 | ― |
| 12月31日 | 木 | 大晦日 | ― |
※入安居(7月30日)は官公庁・銀行のみの休日であり、民間企業に休日とする義務はありません。逆にレイバーデイ(5月1日)は民間企業向けの祝日で、官公庁では通常勤務日です。
2. 法的最低ライン:労働保護法第29条「祝日13日」ルール
タイの労働保護法(Labour Protection Act B.E. 2541 / 1998年制定、累次改正)第29条は、企業が従業員に与えるべき有給祝日の最低数を定めています。
条文の要点
- 使用者は、労働者に対し年間13日以上の有給祝日を事前に告知して与えなければならない
- 13日には、レイバーデイ(5月1日)が必ず含まれること
- 祝日が労働者の通常の週休日と重なる場合は、翌労働日を代替休日として与えなければならない
- ホテル・旅客運送・飲食店・医療機関など特定業種では、祝日労働の代わりに別日の代替休日を与えることが可能
つまり、政府発表の19日すべてを休みとする必要はなく、そこから13日を選んで自社の祝日として就業規則に明記すれば、法的要件は満たされます。残りの6日は通常勤務日として扱うことができ、これは違法ではありません。
どの祝日を選ぶか――選定の実務的考慮
13日を選ぶ際の実務上のポイントは以下の通りです。
3. 業種別の祝日設定の実例
業種・顧客特性によって、最適な祝日設定は異なります。実務でよく見られる3つのパターンをご紹介します。
パターンA:日系製造業(典型的な日系工場)
多くの日系製造業では、政府発表の19日のうち15〜18日を祝日に設定するケースが目立ちます。日本本社のカレンダーとの整合性、タイ人従業員の満足度、地域の他社との比較で「タイで標準的な日系企業」と見られる水準を維持する戦略です。生産計画上必要な日(例:大晦日、ラマ9世記念日など)のみを稼働日とするケースもあります。
パターンB:サービス業・コンサルティング・法律事務所
クライアント対応がメインの業種では、13〜15日に絞るケースもあります。クライアント企業(特に外資系)が稼働している日には、最低限の対応窓口を維持する必要があるためです。
パターンC:小売・飲食店
顧客が休みの日こそ売上が立つ業種では、シフト制を組み、形式上は13日の祝日を設定しつつ、実際にはローテーションで出勤させる運用が一般的です。出勤者には休日出勤手当を支給するか、別日に代替休日を与える形を取ります。
祝日を出勤日にする場合、シフトや手当などを法律的に正しく運用出来ているかどうかは、専門家に確認していただいた方が良いと思います。
4. 祝日に出勤させる場合の割増賃金
就業規則で祝日として指定した日に従業員を出勤させた場合、労働保護法上の割増賃金支払い義務が発生します。これはタイで最も訴訟・紛争が多い論点の一つであり、計算ミスは未払賃金請求のリスクを直接招きます。
割増賃金の基本ルール(労働保護法第61〜64条)
| 従業員の区分 | 祝日労働の通常時間 | 祝日労働の時間外 |
|---|---|---|
| 通常の月給制で祝日も給与に含まれる従業員 | 通常賃金の1倍を追加(合計2倍相当) | 通常賃金の3倍 |
| 日給・時給制で祝日労働の対象とされる従業員 | 通常賃金の2倍を追加(合計3倍相当) | 通常賃金の3倍 |
※上記は2026年4月時点の労働保護法に基づく一般的水準です。具体的な計算は雇用契約・就業規則の文言・残業の有無により変動するため、個別案件では弁護士または労働専門家にご確認ください。
「指定していない祝日」に出勤させた場合は?
政府が発表した祝日であっても、会社の就業規則で「自社の祝日」として指定していない日については通常の出勤日として扱うことができます。この場合、特別な割増賃金は発生せず、通常の賃金のみ支払えば足ります。
5. 振替休日と「労使合意による柔軟運用」
タイの労働保護法は、祝日設定について一定の柔軟性を認めています。労使合意があれば、以下のような運用が可能です。
振替休日の設定
政府発表の祝日に出勤してもらう代わりに、別日を代替休日とすることが可能です。例えば、ソンクラーン期間中の4月15日を稼働日とし、その分を5月の連休前後に振り替えるといった運用です。ただし、就業規則への明記、または個別労使協定の締結が望ましく、口頭での約束だけでは後々の紛争リスクを招きます。
特定業種の特例
ホテル・運輸・医療・飲食・小売など、業務の性質上祝日に休業できない業種については、祝日に労働させた上で、別日に同等の代替休日を与える方法が認められています。この場合も、年間トータルで13日以上の有給休日を確保することが必須です。
年次有給休暇との関係
本記事で扱う「祝日」は、年次有給休暇(Annual Leave、勤続1年以上の従業員に年6日以上)とは別物です。祝日は会社が事前に指定して全従業員に一律に与える有給の休日であり、年次有給休暇は従業員個人が任意に取得する休暇です。両者を混同して「祝日を年次有給休暇に充当した」と扱うことは違法であり、未払賃金請求の対象となります。
6. 就業規則の整備こそが最大の防衛策
祝日設定をめぐる紛争の多くは、就業規則の不備または曖昧な記載に起因します。タイで従業員を10名以上雇用する企業は、労働省への就業規則提出義務がありますが、形式的な提出だけで内容を精査していないケースも散見されます。
7. まとめ|祝日設定は経営判断であり法的義務でもある
タイの祝日設定は、「年13日以上」の法定最低ラインさえクリアしていれば、その上は経営判断の範囲です。2026年は政府発表19日(特別休暇1日含む)から13日を選び自社の祝日とすることも、19日すべてを休みとすることも、いずれも合法です。
- 2026年のタイ祝日は政府発表ベースで合計19日(うち1月2日は閣議承認の特別休暇)
- 当初検討された6月・7月の追加休日案は、ビジネス影響を懸念して2025年12月に閣議で撤回
- 労働保護法第29条が定める最低ラインは年13日(レイバーデイは必ず含める)
- 祝日に出勤させる場合の割増賃金は最大3倍。就業規則で明確化が必須
- 就業規則と年間カレンダーの整備が、労働紛争を防ぐ最大の防衛策
従業員との祝日に関する認識違い、休日出勤手当の未払い問題、就業規則の不備が原因の労働紛争にお悩みの企業様は、T&Tomorrow法律事務所までお気軽にご相談ください。タイ法人の就業規則整備、年間カレンダー設計、労働省への届出、労使紛争の代理交渉まで、日本語で一貫してサポートいたします。
よくあるご質問(FAQ)
- Q政府発表の祝日19日のうち、13日だけを自社の祝日にして、残り6日を稼働日にするのは本当に合法ですか?
- A
はい、合法です。労働保護法第29条が定める最低ラインは年13日(レイバーデイ5月1日を含む)であり、それ以上は企業の裁量に委ねられています。ただし、どの13日を選ぶかを就業規則に明記し、年初に従業員へ周知することが必須です。
- Q当社では従業員数が少なく、就業規則を作成していません。問題ありますか?
- A
従業員10名以上を雇用する企業は、労働保護法上、就業規則の作成および労働省への届出が義務付けられています。10名未満であっても、祝日や賃金・労働時間に関するルールを書面化していないと、紛争時に企業側が不利になる傾向があります。10名未満の企業でも、最低限「雇用契約書+年間カレンダー」の整備をお勧めします。
- Q入安居(カオパンサー、7月30日)は休みにすべきですか?
- A
入安居は官公庁・銀行のみの休日であり、民間企業に休日とする義務はありません。ただし、従業員の宗教感情や近隣他社の動向を考慮して休日とする日系企業も少なくありません。当日は禁酒日でもあるため、社内イベントやアルコールを伴う接待は避けるのが無難です。
- Qソンクラーン期間(4月13〜15日)に出勤させることはできますか?
- A
就業規則で祝日として指定していなければ、法的には出勤させること自体は可能です。ただし、ソンクラーンはタイで最も重要な国民的祭日であり、地方出身の従業員は帰省を強く希望します。無理に出勤させると士気低下・離職・無断欠勤につながるため、シフト制で最小限の人員のみ出勤させ、別日に代替休日を与える運用が現実的です。
- Q2026年中に追加の特別休暇が発表される可能性はありますか?
- A
可能性はゼロではありません。2025年12月時点で6月・7月の追加休日案は撤回されましたが、観光振興や経済刺激を目的に、年度途中に新たな特別休暇が閣議決定されるケースは過去にもあります。最新動向は閣議発表またはタイ中央銀行(Bank of Thailand)の金融機関休業日通知で確認可能です。重要な発表があった場合は、社内カレンダーをアップデートし従業員への周知を行いましょう。
- Q祝日に出勤させた従業員に、賃金ではなく代休を与えることは可能ですか?
- A
労使合意があれば可能です。ただし、与える代休は祝日労働日から相当期間内(一般には4週間以内が目安)であることが望ましく、代休制度の運用ルールを就業規則に明記する必要があります。代休を与えずに通常賃金のみで済ませるのは違法(割増賃金の未払い)となります。
監修:タイ国弁護士 Ms. Mallika Thepwong(タイ弁護士会所属)
タイ法人の就業規則整備、年間カレンダー設計、労使紛争への対応をご検討の方は、T&Tomorrow法律事務所までお気軽にご相談ください。日本語で対応いたします。初回相談無料。
是非弊社へお問い合わせください。
お困りごと、ご相談

ご相談無料です。どうすればよいかの方針をアドバイスさせていただきます。
担当者が可能な限り迅速に返信致します。

コメント